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北欧諸国(フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランド)におけるSMR(小型モジュール炉)の検討状況をざっくり調べてみました。各国の現状、政府政策、進行中のプロジェクト、規制環境、市場可能性、比較分析、将来展望を見ていきましょう。

はじめに

SMR(小型モジュール炉)は、従来の大型原子炉に比べて、小型でモジュール式の設計を持つ核反応炉であり、安全性が高く、コスト効率が良いとされています。北欧諸国では、気候目標達成とエネルギー供給の多様化のためにSMRが注目されています。各国のエネルギー政策と需要に応じたアプローチが異なり、詳細な分析が必要です。

国別分析

フィンランド

現状 : フィンランドにはロヴィーサとオルキルオトの2つの原子力発電所があり、合計容量は約4,500MW。SMRは電力供給と地域熱供給の両方に利用可能とされています。

進行中のプロジェクト: VTTとSteady EnergyはLDR-50地域熱供給用反応炉を開発中であり、Rolls Royce SMRとのパートナーシップも進行中です(Small modular reactors - Säteilyturvakeskus STUK)。

政府の政策: 核エネルギー法の更新を進め、ラッペーンランタ・ラハティ工科大学の政府報告書(SMR Development in Finland - FinNuclear ry)では、現在の法制度内でSMR導入が可能とされていますが、さらなる更新が必要とされています。

タイムライン: 最初の地域熱供給SMRは2030年までに商用化可能と見込まれています(First small nuclear reactor in Finland in 10–15 years? - Fortum)。

スウェーデン

現状: 6つの原子炉が電力の約40%を供給。政府は核容量の拡大を計画し、SMRを含む新炉の建設を推進しています(Nuclear Power in Sweden - World Nuclear Association)。

進行中のプロジェクト: UniperとLeadColdはオスカーシャムンサイトでデモンストレーションSMRを2030年までに建設予定。VattenfallはリングハルスサイトでのSMR可能性を調査中(Funding for demonstration Swedish SMR - World Nuclear News)。

政府政策: 2035年までに2基の大型炉、2045年までに10基の新炉(SMRを含む)の建設を目標に設定。新規サイトでの建設も許可(Sweden plans new nuclear reactors by 2035, will share costs - Reuters)。

タイムライン: 最初のSMRは2030年代初頭に運用開始可能と見込まれます。

ノルウェー

現状: 商用原子力発電所はなく、SMRによるエネルギー需要の増加に対応する可能性を検討中です。

進行中のプロジェクト: Norsk Kjernekraftはハルデン、オーレ・ハイム、フィンマルクでのSMRベース発電所建設を提案(Norway / Companies To Evaluate Small Modular Reactors For Municipality)。

政府政策: 核エネルギーの可能性を評価する委員会を設置し、2026年4月1日までに報告書を提出予定(Norway SMR options to be explored with X-energy - World Nuclear News)。

タイムライン: 導入は2030年代中盤以降と見込まれ、委員会の推奨次第です。

デンマーク

現状: 核禁止法により原子力発電所はなく、SMR技術開発企業(Seaborg Technologies、Copenhagen Atomics)が存在します(Nuclear Energy in Denmark - World Nuclear Association)。

進行中のプロジェクト: モルトンソルト反応炉の開発に注力し、国際的なパートナーシップを模索(Seaborg Technologies - Rethinking Nuclear Energy - Sustainability Copenhagen, Denmark)。

政府政策: 現在の法制度ではSMR導入は禁止されており、政策変更が必要です。

タイムライン: 近未来での導入は見込めません。

アイスランド

現状: 地熱と水力発電に依存し、SMRへの関心はほぼありません。

政府政策: 核エネルギーに興味を示さず、再生可能エネルギーに注力(Government of Iceland - Energy)。

タイムライン: SMR導入の計画は見られません。

規制環境

フィンランド: STUKが規制し、核エネルギー法の更新を進めています。

スウェーデン: SSMが規制し、建設場所の柔軟性を高める法改正を実施。

ノルウェー: DSAが規制に関与し、委員会による枠組み見直し中。

デンマーク: 核禁止法により規制枠組みなし。

アイスランド: 核エネルギーに関する規制枠組みなし。

市場可能性

エネルギー需要: 気候目標達成のため、クリーンエネルギーの需要が高まっています。

応用分野: 電力供給、区熱、産業プロセス熱に利用可能。

経済性: モジュール設計と大量生産によるコスト優位性が期待されますが、詳細な評価中(Small Modular Reactors: Techno-Economic Assessment - GOV.UK)。

比較分析

フィンランドとスウェーデンはSMR開発と導入計画でリード。ノルウェーは初期段階、デンマークは企業活動はあるが政府支援なし、アイスランドは無関心。

北欧各国間の協力(例:フィンランドとスウェーデンの共同研究)はSMR開発を促進可能。

将来展望

フィンランドとスウェーデンは早期にSMRを導入する可能性が高く、ノルウェーは中長期で追随可能。

デンマークとアイスランドは当面導入は見込めません。

結論

SMRは北欧諸国のエネルギー安全保障と気候目標達成に貢献可能。フィンランドとスウェーデンが先行し、ノルウェーも可能性あり。デンマークとアイスランドは当面導入困難。協力と知識共有が成功の鍵となります。